つぶやきとプログラミング

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顔は口ほどに嘘をつく

この本を手に取ったきっかけ

弊社のトップ営業マンから「これ読みな!大長っち育成したいから!」といきなり渡されました。

営業をやっていく上で、相手の表情や動作から何を考えているのかを読み取る技術は欠かせないらしいです。


例えば、「前のめりに聞いてたら、話に聞き入っている」「腕を組んでたら警戒している」「手遊びをしているから退屈」といった動作からの推測は単純だけど、それが表情にも応用できるというのです。

バシバシに売り上げを伸ばしている方だから、そうなんだろうと信じて早速手に取りました。
 

概要

パプアニューギニアから日本に至るまで幅広い人種、文化の人の表情を対象にして、「表情は学習されるものではなく、先天的に表現されるもの」を突き止めた研究内容がまとめられています。

つまり、特定の感情から生じる表情は遺伝子レベルで決まっていて、文化や環境で変わるものではないということです。

誰しも「感情が読めればいいのに…」「相手が何を考えてるのかわからない」「この人の笑いのツボはどこなんだろう?」と思ったことがあるハズです。

人の感情を推測できることは紛れもなく有益。
 

訳者あとがきでも次のように書かれていました。

セラピストや医師は言うまでもなく、教師やカウンセラー、介護士、飛行機の客室乗務員や新幹線の車掌、ホテルの従業員やタクシーの運転手など人と接することの多い職業に就いている人たちにとって、まさに福音の書だと言ってもいいかもしれない。それだけではない。自分の感情をもてあまし気味のすべての現代人に計り知れない益をもたらすものだと確信する。


また本書では、表情と感情のリンクだけでなく、感情が生じるまでのプロセス・相手が抱えている感情を読み取った後の対応方法や伝え方についても触れています。

感情の発生プロセス

本では図でまとめられていなかったので、自分が理解した範疇で描いてみました。

感情の発生プロセス
感情の発生プロセス

感情は以下の順序で発生します。

  1. 環境・状況から生まれた出来事が人に影響を及ぼす。
  2. 影響は、まずDNAにアクセスする。本能的に埋め込まれた反応が返される。
  3. DNAを通過したら自動評価機構(autoappraisers)に委ねられる。ここでの反応は感情的なもの。
  4. 自動評価機構での評価に長い時間がかかると意識へと判断が委ねられ、理知的に感情を定める内省が始まる。
  5. 1.での現象がはじめてのものだった場合、自動評価機構・内省による判断が情動のデータベースに書き込まれる。
  6. 感情が一旦はじまると、感情的になっていることを自覚するので、一旦DBにストアされた感情が意識によって再評価される。

感情と表情のリンク

感情は次に紹介する五つの項目に大きくわけられていて、そのいずれもが特徴的な表情を備えています。

怒り:眉毛が真ん中によって下り、にらみつけるような目つきをしている。口は開き(もしくは固く結び)、顎は前に突き出る。

喜び:大頬骨筋と眼輪筋が一緒に収縮する。眼輪筋を自発的に収縮させることはできないので眼輪筋が明確に表現する。

悲しみ:唇の両端が引き下がり、眉の内側の端が引き上がる。視線は下に向けられ、上まぶたが落ちる。

驚き:上瞼が上がると同時に眉毛も上限まで上がりながら中央に寄る。顎が下り、口が開かれる。目が大きく見開く。

嫌悪・軽蔑:左右アンバランスの表情。表情が片側に現れる。鼻に皺が寄る。上唇が上がり、下唇がわずかに突き出される。頬が持ち上がる。

表情から読み取れる感情の本筋は上記に沿って解釈できるそうですが、「かすかな表現」・「部分的な表現」・「微細な表現」の区別によっても、少し表現が異なるようです。
「嫌悪・軽蔑」を例にすると、激しい嫌悪・軽蔑の場合、上唇が上がって下唇がわずかに突き出ます。
一方で、かすかな表現の場合は、唇が片側だけ上がる表情から解釈されます。

感情的になるということと破壊的感情

ダライ・ラマが指摘する「破壊的感情」とは感情に引っ張られることで正常な判断ができなくなり、自分をコントロールできなくなることです。
自分の感情に沿った意見を尊重し、感情に合わない情報が入ってくるのを遮断、柔軟に物事を考えることを拒否します。

破壊的感情
破壊的感情

もし、破壊的感情が一、二秒しか続かないものであるならば、すぐさま身近に起きた問題に注意を向けることができるので有益といえるかもしれません。ただ、数分、数時間と続くようであれば、不適切な情動行動によって不利益が生じます。

「思ってもないことを言ってしまう」「思いがけず手が出てしまった」「あの時はすまなかった」

などの弁解が思いつく出来事は不適切な情動行動によって引き起こされたものだと言えます。

感情的になるものの代表例が「怒り」ですが、怒りに焦点を当てて研究をしている心理学者のキャロル・タブリスは、怒りを表に出すと大抵の場合、状況を悪化させると主張しています。

感情的にならないようにしたい!

最初のステップは自分をそんなにも感情的にさせているのは何なのかを突き止めることです。
ただ、何なのかを考える前に既に自動評価機構に支配されて感情的になってしまうかもしれません。そうならないようにするためには、自分が感情的になったら、他人にどういう影響を与えるかを判断し、自分を食い止めようとすることです。

これを自分の感情への「注意深さ」としています。

次のステップが自分が感情的になった時のことを記録につけることです。出来るだけ仔細に書くことで、感情の引き金を解釈し直せるかもしれません。根気よく続けることで、次第に意識による感情の再評価のプロセスを発生させやすいです。
悪い方向からいい方向へ再評価することで、感情に支配されなくて済むようになります。

たとえば、少し過度にからかわれたとしても感情的にならず、うまい具合にコントロールして受け流すといったことです。
これが発展すれば、笑いに変えることもできるようになるかもしれません。

禁断の書の一面もある!?

ただこの本を読む前に一つ知っておいて欲しいことが「この本を読んだ人は、二度と同じ目で他人を見られなくなるだろう」ということです。

感情を読み取れるスカウターをつけたも同然で、相手がなにを考えているのか・どう思っているのかを読み取れるようになります。

「ピピピッ、戦闘力(激おこ)53000」ってな具合です。

スカウター
スカウター

そのスカウターの測定結果によって、次の行動を決めるようになります。

「この話が面白いと思ってくれてそうだから、もうちょっと掘り下げようかな」「ちょっと退屈させちゃってるみたいだ、次回からはこうしよう」とかです。

スカウターから与えられるたくさんの情報は、分析と反省を要求しつづけます。

要求に応えるためには思考の速度を上げないといけなくなるので、以前よりもずっと気苦労してしまいます。

もし、自分が喜怒哀楽が激しいように見せたい場合や明るい印象を与えたいなら、より感情の色を表に出した表情をすればいいわけです。
TikTokの女の子ですが、まるでピクサー映画から飛び出してきたキャラクターみたいな喜怒哀楽っぷりです。

天真爛漫な印象を与えられます。

元々、人付き合いに気苦労しやすい体質の人にとっては、諸刃の剣になってしまう可能性を多分に含んでいます。

一度、読んでしまうと人の表情から感情を分析することは止まらないので、そういう意味では禁断の書なのかもしれません。

至高の一冊として紹介したい

「幸福は親密な人間関係と収入に比例する」「気分と感情の違い」「声からの感情の読み取り方」「しぐさの感情表現」「感情が感情を呼ぶ」「過去の喪失体験を豊かにする」「他人の苦しみにどう反応するか」「もっとも強力な嫌悪の引き金は体からでるもの」「喜びと達成感は違うもの」「笑いによって気持ちを操る」「シェークスピアから学ぶオセロの過ち」など書かれていることは多岐にわたります。

もっとも、学術的な本ではなく、一般向けに噛み砕かれて紹介されているので、飲み会ネタとしても流用できます。

冒頭の引用文にもありますが、人と接する職業柄の方にはもちろんオススメ、職業だけでなく人と接する機会の多い方にもぜひ読んでいただきたいです。

社内エンジニアの僕は人と接する機会が少ないのですが(悲しいことに週末くらいしか初対面の人と喋る機会がありません笑笑)、そんな僕が読んでいても有用な点が多々あるので至高の一冊として紹介しました。

顔は口ほどに嘘をつく (河出文庫)、ポールエクマン著
人間の顔は、驚くほど多くのことを語っている!感情とその表現研究の第一人者が、相手の本当の感情を読み、自分の嘘や感情をコントロールする技術を教える、明日から使える画期的指南書!
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