『天気の子』をもっと楽しむ秘訣は作中の"対比"に気づくこと!
新海誠の作品とは?
対比を描くのが大好き!というイメージがあります。
なぜ新海誠作品は、対立する二つの要素をないまぜにして繰り広げられるのでしょうか。
そもそも新海誠はゲーム会社に勤めていました。
「日本ファルコムで作っていた映像がファンタジー世界であり、自分が暮らしている世界はそれとは全く別。自分の生活に密接したものを表現したかったから。」
という理由から、ゲーム会社を退職して、劇場アニメ制作を開始します。
そうして完成したのが『ほしのこえ』でした。
『ほしのこえ』、宇宙・地球。
『雲のむこう、約束の場所』、一人・世界。
『秒速5センチメートル』、目標に突き進む人・目標が曖昧な人。
『星を追う子ども』、地上世界・地下世界。
『言の葉の庭』、生徒・教師。
『君の名は』、都会・田舎。
すべての作品のテーマが対比で成り立っているのがわかります。
この対比を見ると、どちらかには属せるような対比の形を取っていることがわかります(ほしのこえは例外?)。
僕の場合、上から地球、世界、目標が曖昧な人、地上世界、生徒、都会です。
どちらかに感情移入できることによって、対比になる方を非日常的に味わえると思います。
つまり、自分の生活に密接する視点をもって、他方の未知の世界を楽しめる構成になっています。
こうして、退職した理由をうまく自分の作品に落とし込んだのではないでしょうか。
対比を楽しんだ経験
僕はずっと都会で生活していたので、鹿児島県から上京してきた友人の話が非現実味を帯びていて聞いていてわくわくします。
「桜島が噴火したら、街中が灰だらけになるんだよ」
と聞けば、雪が肩に降り積もるのを灰に変換して想像します。
「鹿児島は昼から路上で昼寝してるやつばっか」
と聞けば、マレーシアで昼から寝てる人間がいたなぁと思います。
「ちょっと外出ただけで畑しかねぇよ」
と聞けば、自転車を二人乗りしている青春カップルが頭を通り過ぎます(飛躍しすぎ?)。
自分が密接に関係する都会と未知の田舎の対比から生まれるワクワクを楽しみます。
海外旅行に行くのも同様の理由でしょう。
日頃の暮らしとはかけ離れた海外の文化はエキゾチックです。
海外旅行の楽しさは、日常との対比から得られるものといえます。
『君の名は』の対比に着目する
直近の作品の『君の名は』に注目して考えてみると、
田舎出身者が想像する「都会」。
都会出身者が想像する「田舎」。
この二つをうまく織り交ぜています。
田舎と都会の対比を中心に描いた作品は新海誠が初です。
田舎は田舎、都会は都会で区分けされているのが普通で、混ぜられているものは見たことがありません。
田舎を舞台とした作品は、
『あの花』『のんのんびより』『ひぐらし』『ばらかもん』
都会で繰り広げられる作品は、
『シュタゲ』『シティーハンター』『攻殻機動隊』
田舎系は話の展開スピードが数日かけて話が進んでいくゆっくりめで穏和な傾向なのに対して、
都会系の作品は、1日おきにドンパチしてるようなハイスピードな作品(恋愛ものでも1日おきに異なる展開が多い)な傾向があって時間の流れが違うので、二つを一緒に描くのは難しいのです。
対比を繋ぐ架け橋とは
『君の名は』には次の特徴がありました。
ゆっくりな田舎、ハイスピードな都会。
スピードの違う二つを調和させるために新海誠は、映像技法のタイムラプスを効果的に用いています。
タイムラプスとは、「時間の経過」を意味する英語「time lapse」から来ています。 その名前の通り時間が経過する様子を早回しで見ることで、そのようなことができる動画を「タイムラプス動画」、またそのような動画を撮影することを「タイムラプス撮影」といいます。
下の二つのカットではどちらでも「田舎」から「都会」への場面転換においてタイムラプスが使われています。
タイムラプスによって、相反する田舎と都会のスピード感を違和感なく繋げていて作品のテンポを損ねていません。
『君の名は』の作成に至って、ブレイキングバッドから着想を得たそうです。
もはや正反対のニュアンスの作品から技法を学んでいるのは面白いです。
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『天気の子』を楽しもう!
「今っぽい映像にする」を常に心がけている新海誠。
次に公開される『天気の子』が楽しみです(早くみたい!!!)。
作中でどんな対比が描かれるのか。
その対比を繋ぐ架け橋はどうしているのか。
こんな視点をもって、天気の子を見てみると面白いのかもしれません。。。
公式サイトのあらすじからでは皆目検討がつかないですね笑笑