つぶやきとプログラミング

アメトーーク好きなWebエンジニア芸人

雀荘で働くということについて

麻雀

麻雀

1ゲーム400円の場末の雀荘で働いていた、時給は900円。

「場末の雀荘」の字面から連想されるのは、タバコの煙が蔓延した密閉空間。人生終焉みたいなオッサンたちが眉間を寄せて卓を囲みしのぎを削っている。

だと思う。けど、僕が働いていたところではそんなことはなかった。清潔を第一に掲げていたので、トイレは1日3回掃除していたし、灰皿もすぐ交換、空調ガンガンだった。卓で打っているときも普通におしゃべりする雰囲気だった。

 

お客さんに混ざって戦うことを本走、お客さんの代打ちをすることを代走と呼ぶ。

お客さんが2人きたときにあと二人足りない!、そんなときに店員が本走して人員補充する仕組みだ。本走の時は、店員も場代を支払う必要があったので、1ゲームがだいたい40分で終わるとしたら、時給300円で働いていたことになる。。

 

新人は、麻雀を”学ぶ”ことから始まるので本走をやらされる。

この期間に辛い思いをしながら学ぶ。

なにが辛いかというと、お客さんのドリンク交換・灰皿交換・おしぼり交換・卓全体の回転状況などを気にかけながら打たないといけないので、全力を出せないのだ。

清潔感をモットーにしていたお店だったので、たとえば灰皿交換については「灰皿に三本溜まったら交換」を言い渡されていた。灰皿に5本溜まっていたら怒られた。

聴牌の雰囲気というのは手出し、ツモ切り、牌の切り方から感じるのだが、上記のこともやっていたら手一杯ならぬ脳一杯だ。

 

麻雀をやったことない人にわかりやすくすると、自分含めて4人で回転寿司に食べに行ったとする、他3人がオーダーして、逐次流れてくるお皿の量・質をもとに友人の満足を想定するのが麻雀の基本。さらにオーダー順、皿の取り方、皿の重ね方、水の飲み方などから満足(聴牌)を推測していくのが応用。

店員はここからさらに他の卓のことも気にかけないといけない。

 

自分のマルチタスクの限界を知る。強制的に視野と思考力を拡張させられる。

麻雀を"学ば"ないとお金が減る。

もとより、マルチタスクの資質がなかった僕には相当辛かった。

 

そんなこんなで働いていても3、4ヶ月したら慣れてくる。

あれだけ辛かった「周りを視る」こともある程度染み付いてきた。

 

そこで次の問題が生じる。

「麻雀に飽きる」

週三回、1日12時間のシフトで入っていたので、一週間に40時間弱は麻雀に関連しているわけだ。フリーのお客さんとの会話も「店員と客」の間柄なので、やっぱり会話も弾みづらい。しかもお客さんが負けてたりしたときのやりづらさったらなかった。つまり、本当に麻雀が好きじゃないとやってられない。飽きる。

 

「強くなりたい」と思って自発的に読んだ本の数だってたかだか一桁程度だし、麻雀プロの試合だってYoutubeでちらっとみるくらいでほとんど見ていなかった。その時間があれば、FPSプロの大会を見ていた。雀荘でのスコアはプラマイゼロくらいだったので麻雀自体への向上心はなくしていた。

仕事への慣れ、競技の特性上から目に見えて強さが明らかにならないことから徐々に麻雀を楽しめなくなっていった。

 

もしかしたら、皮肉にも雀荘で一番楽しかったのは辛かった業務作業なのかもしれない。金銭が減るというプレッシャーも半ば強制的ではあるが成長を促してくれた。そこからずるずると続けてはいたものの、働き始めて7ヶ月が経ったところで辞めた。雀荘というイメージから「辞めるのが面倒くさそうだな」と偏見があったが、案外簡単なやりとりで済んで、普通のバイト先以上にあっさりしていた。

 

辞める時には走馬灯のように、お客さんのことがよぎった。

自分と同い年でめっちゃ強い学生。眼鏡インテリで物腰が柔らかいお兄さん。無駄に前ボタンを開けていて口調が強いお姉さん。「xx工業」という刺繍が入ったポロシャツをいつもきているオッサン。リーチのときに千点棒をサイドスローで投げ入れるオッサン。四暗刻リーチで代走をお願いしてくるオッサン。モノホンの強さのオッサン。オッサン。オッサン。

雀荘の客層はオッサン6割、ミドル3割、残りが学生と女性だった。

 

雀荘バイトから学べたのは次のようなこと。

 

本当に好きなのは麻雀ではなく、セットで同卓する友人との会話。麻雀の奥深さ・戦略性については好きだが、僕にとって麻雀はあくまでも会話のエッセンスだということ。

本当に楽しいと思えるのは、技術・知識それ自体なのか、はたまたそれを媒体にして他のことに活かすことなのか。自分は前者だと思っていたけれど、それは勘違いで後者のような気がしてきた。

好きなことであれば、強制されず自発的に動く。このことを改めて痛感した。

 

さて、いまの自分が自発的に動いているのは何だろうか??

 

 藤田さんと多井さんの本は、戦術書というよりは麻雀と人生を関連づけたライフスタイル本なので、麻雀にお熱の人もそうでない人も読んで楽しいと思います。どちらもkindle unlimitedです。

仕事が麻雀で麻雀が仕事 (近代麻雀戦術シリーズ)

仕事が麻雀で麻雀が仕事 (近代麻雀戦術シリーズ)

 

 

 

多井熱 (近代麻雀戦術シリーズ)

多井熱 (近代麻雀戦術シリーズ)